野営時代

人生という山の五合目辺りで立ち往生している男の野営地。助けが来るまで終わらないビバークの記録。

野営時代宣言

理由はさておき、図らずもこんな場所で立ち往生する羽目になった。
進むことも戻ることも叶わず、止む終えず今夜はここで夜を明かす。


緊急の野営、ビバークだ。


ビバークのテントの中、手の中で光るディスプレイは私の顔を照らし、背中を丸めたシルエットを仮設の薄い膜に影絵のように映す。


今夜もこの山のあちこちで、ポツポツと間隔を空けて無数の野営テントが立ち、夜更けまで彼らのシルエットは揺れている。


朝が来たらテントから出て慎重に移動しよう。ひょっとしたら、進行方向もはっきりしているかもしれない。


日が昇り、日が暮れ、その夜もまた足止めを食らったら、もう一晩、もう一晩と、ビバークを繰り返そう。


助けが来るまでは持ちこたえよう。
充電が切れるまでは頑張ろう。


天体が動くように、たくさんの小さく光るテントの星座が、一晩ごとに、少しずつ配置を変えて移動していく。


私たちは仕方なくここにいる。


S.O.S、聞こえるかい、
S.O.S、聞こえてるよ。


私たちはいつまでここにいるのだろう。

いつまでいられるのだろう。


もしも助けが来たらお先に失礼します。

その時は、さようなら。


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